南オセチアとアブハジア 露大統領、独立を承認 米欧と対立鮮明に
2008年8月27日(水)08:15
■「冷戦恐れず」和平原則ほご
【モスクワ=佐藤貴生】ロシアのメドべージェフ大統領は26日、欧米諸国の反対を押し切る形で、グルジア領南オセチア自治州とアブハジア自治共和国の独立承認に踏み切った。上下両院の決議翌日というタイミングで政府が独立を承認したことで、当面、米欧との関係好転を望まないとの意思を示した形だ。同大統領は「われわれは冷戦を望んでいないが、恐れてもいない」と断言。ロシアと米欧の対立関係は、一層深刻化することが避けられない情勢となった。
グルジアのロマイヤ安全保障会議書記は、「すべての国際法とグルジアの、そしてロシア自身の憲法に反している」と反発した。
一方、メドべージェフ大統領は独立承認に続き、南オセチアとアブハジアとの外交関係樹立と、友好協力条約の草案策定を命じる大統領令に署名、両地域の独立を既成事実化する動きに出ている。
ロシアの独立承認の強行は、グルジアとの紛争終結に向けて策定された6項目の「和平原則」に真っ向から反しており、同原則自体がすでにほごにされた形だ。今後、国連などで本格的な論戦が繰り広げられ、ロシア制裁や孤立化策などの議論が米国を中心に強まるのは避けられないものとみられる。
メドべージェフ大統領はこれに対し、他の国々もロシア同様に南オセチア、アブハジアの独立を承認するよう呼びかけた。現在のロシアのように、米欧の主要国とは距離を置いている国々に対して結集を求め、“反欧米同盟”の連携を模索する可能性もありそうだ。
南オセチア、アブハジアの両地域の独立承認について、ロシアは周到に手を打ってきたふしがある。ロシアは両地域の住民に対し、ロシア国籍を与え、住民の大半がロシア旅券を有しているうえ、南オセチア自治州の場合、歳入の3分の2がロシアからの支援でまかなわれているとされる。
両地域の大統領は独立を前提にしない限り、グルジアのサーカシビリ大統領との会談には応じない姿勢を示してきたほか、ロシア以外の国で構成する平和維持部隊の駐留には難色を示すなどして、ロシアとの親密ぶりをアピールしてきた。米欧は今後、難しい対応を迫られることになる。
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【用語解説】アブハジア自治共和国
面積8600平方キロ。人口約21万人。現在の民族構成はイスラム教スンニ派主体のアブハズ人(7万人)▽グルジア人(6万人)▽アルメニア人(5万5000〜6万人)など。1992〜94年にグルジア中央との間で独立絡みの紛争。独立国家共同体(CIS)の平和維持部隊としてロシア軍が展開しており、その兵力は最大3000人まで増強可能。
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【用語解説】南オセチア自治州
面積3900平方キロ。人口9万9000人(89年)。キリスト教のオセット人(66%)▽グルジア人(30%)など。91〜92年にグルジア中央と紛争。ロシアとグルジア、北オセチア共和国(露)の3者が500人ずつの平和維持部隊を派遣していた。自治州の約40%がグルジア政府の支配地域。
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