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2008年10月25日 星期六

「大虐殺に沈黙した法王」は聖人か 聖職者が論争

2008年10月25日8時31分【ローマ=喜田尚】第2次大戦中のローマ法王ピオ12世(在位1939〜58年)に対する評価を巡って、ユダヤ教とカトリックの聖職者の論争が再燃している。ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)に沈黙したと批判するユダヤ教指導者が、法王を聖人に列するバチカンの動きに異議を唱え、それにカトリック側が反発。微妙な関係のバチカンとイスラエル政府は沈静化に必死だ。

 きっかけは7日、バチカンの世界代表司教会議にユダヤ教徒として初めて招かれたイスラエル・ハイファの宗教指導者の発言だった。バチカンがピオ12世を聖人の前段階である「福者」にする手続きを進めていることに触れ、「我々は彼の沈黙を忘れることができない」と中止を求めた。

 これに対し、バチカンの列聖省の神父が18日、ピオ12世に批判的なイスラエルのホロコースト記念館「ヤド・バシェム」の展示を取り上げ、「歴史の偽造だ」と発言。現法王ベネディクト16世のイスラエル訪問は「展示が変わらなければ、ないだろう」と語ったため、波紋が広がった。

 ピオ12世は、虐殺を見て見ぬふりをしたとしてユダヤ人団体から批判されてきた。一方、バチカンはホロコーストへの批判を避けたのはナチスの反発で事態を悪化させる可能性が強かったためで、実際には各地の施設にユダヤ人の保護を指示し、犠牲拡大を防ぐ最大限の努力をしていた、とする。

 ベネディクト16世は9日の50周忌追悼ミサでピオ12世の功績をたたえた。だが、自らがドイツ人で、就任直後の祖国訪問でシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)を訪れるなど対話を進めてきただけに立場は微妙だ。バチカンの報道官は双方の信者に「法王に圧力をかけるべきではない」と異例の呼びかけをした。

バチカンがイスラエルと国交を樹立したのは93年。前法王ヨハネ・パウロ2世は過去のキリスト教の反ユダヤ主義への関与を謝罪、00年にはイスラエル訪問も実現したが、双方は教会施設の所有権など多くの懸案を抱えたままだ。

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